ジェイコーディ株式会社

町工場の課題 ~商品仕様の変化、バリエーションの増加に伴う在庫増について(IoT時代のものづくりは情報戦)~

町工場の課題 ~商品仕様の変化、バリエーションの増加に伴う在庫増について(IoT時代のものづくりは情報戦)~

「毎年商品仕様が変化し、さらにバリエーションが増えて、需要予測が外れる等で在庫が年々増えることが課題」

下町のものづくり企業の経営者の集まりで、このような課題があった。

大手企業でも、量産の自動車メーカー等、バリエーションが年々増えることで、業務が大変になったり、在庫が増えたりしている。自動車ではジャストインタイムと言われる、作るタイミングに作るだけ生産ラインに部品をもってきてもらうという仕組みがあって、基本在庫は抱えないということになっている。
しかし、バリエーションが増え、逆にロットが減っている今、大量に同じものを生産し運んでくるコストに比べ、少量を生産、運ぶことになると、コストが高くなる。よって、実はラインサイドや倉庫に在庫をもったり、工場内で部品を組み付ける工程を取り入れる等でバッファーを持つ仕組みになってきている。

また、バリエーションの違いによって、すべての部品が変わることは、少量多品種的になってしまいコスト高になるため、機種跨って標準部分を決め、そこの部品や工程は変えないようにし量産効果を出すようにする等の取り組みが行われている。

製造業の生産形態には大きく分けて3つある。
各生産形態によって、どのタイミングで設計や調達、生産を開始するかが違ってくる。

①量産
②中量産(仕掛で一部の部位を先につくっておき、顧客の仕様が入ってきたらそれらを使って最終製品をつくる生産形態)
③個別受注生産

オーダーが来てから生産する個別受注生産形態の会社なら、在庫をする必要がない。
しかし正確には、顧客に提示する納期のタイミングによっては、長納期(生産期間が長い)の素材や部品は受注前に発注する必要があるので在庫の必要がある。
自社で生産する納期が長いものも、先に加工・組付けを行っておく必要がある。

つまり、これまで上記①の量産、③の個別受注生産だった生産形態の企業も、バリエーションの増加、ロットの減少に伴い、②の中量産化しているということである。
従い、これまでの生産形態の管理方法では、在庫は増え、コストは高くなるのは当然になってしまうだ。

現在、元々中量産だった機械、工作機メーカーに加え、自動車メーカーも、電子電機メーカーも、部品メーカー、重工メーカー等もすべて中量産化しているため、これまでの業務や情報の管理の考え方を変え、改革をしようとしている。

大企業だけに留まらない。例外なく、それらは中小企業や町工場も直面している問題なのだ。

これらを解決するためにはボトルネックになっている部分を見極め様々な取り組みが必要だが、まずは自社の強みと標準の部位を決めることだと思う。
顧客仕様、市場ニーズに対応する部分(毎回仕様が変わる部分)と、顧客の仕様によって変わらない部分(自社の強みの部分と付加価値を出さない部分)を分けることだ。商品企画、開発・設計において、これを意識して実施する必要がある。

①自社の強みの部分を決める
②顧客の仕様によって変わらない部分(標準部分)を決める(コストがセーブできる)

そして、営業段階で顧客に上記①、②の魅力を伝え、仕様決めを誘導することである。

上記①と②以外は、顧客ニーズに対応する部分で、そこはコストが高くなることを伝えることである。
顧客は本当に欲しい仕様は高くてもお金を払うことになる。

もちろん、きちんと競合や市場を見て、本当に上記①は市場にも魅力的な自社の強みになっているのか?
また、上記②は、本当に標準部分になりえるか?を見極め、上記①、②を決める必要がある。
毎回すべて顧客ニーズに対応していたら、調達する量も減り、工程も毎回変わり、さらに予測が外れると、すべて死蔵品になってしまう。
上記②は在庫をしても、必ず売れる部分であるなら、在庫は悪ではないのだ。その在庫は事業戦略となる。

これからの時代は、仕様(スペック)をいかにコントロールする力をもっているかが、企業が生き残るために必要となってきた。
そして、IoT時代のものづくりは、情報戦となる。
つまり、ものづくりの自社マスター情報(仕様、製品構成、部品・素材、原価、納期、工程、保守等)の情報を整備し、いかにそれらを活用して、ものづくりをする前、図面を書く前に、「儲かる製品を企画できるか」が肝である。
これらを理解し、10年前から実施してきた大手企業は、今、図面を書く前にその製品が儲かるかどうか見えている。

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